「水野くん」

名前を呼ぶと彼は少しして本を読む手を止めてこっちを見た。


「もしかして、コレ、水野くんの?」


わくわくしたような不思議な気持ちで

彼に手に持っていた本を見せると、

すぐに彼は1回頷いた。


……やっぱり!!


「私の机の上にあったんだけど……」

なんでかな?

そう思って首を傾げると

「読み終わったから」

そう一言表情を変えずに言うと

「もし山田さんが読んでないなら、貸そうと思って」

え、私に貸すために机の上に置いたの?

意外すぎる言葉にびっくりして言葉が出て来ない。

あの水野くんが私に?


何も言わない私を不思議に思ったのか

ゆっくり瞬きをしてから

「もう読んでた?」

と語尾をあげて口を開いた。


彼からはてながつくような言葉をかけられたのは初めてだ。


「いやっ、まだ読んでない!!」

私は慌てて答えると

「なら貸すよ、よかったら読んでみて」

そういって私が持つその本に視線を移した。


「あ、ありがとう!ぜひ貸してもらう!」


どうして急に貸してくれる気になったんだろう……。


そう思ったけど、素直に借りることにした。

今度買って読もうと思ったけど、ラッキー!

私は本を持って自分の机に帰った。