――宿泊研修も無事終わり、
私は素の自分で気持ち新たに
みんなとの日々を過ごしていた。
そんな最中、
「あれ、香乃子、机の上に本置きっぱなしだよ?」
昼休み、4人で飲み物を買いに教室を出て、帰って来た時だった。
美奈の声に自分の席を見ると、
確かに机の上には1冊の本が。
それも文庫本サイズで、
確かにみんなと仲良くさせてもらってからも
本を学校に持ってくるのは続けていた。
だけど……、
「あれ私のじゃない」
そう、私はいつも持ち歩いて読んでいる本にはお気に入りのブックカバーをかけているし、
しかも本なんて机の上に出した記憶がない。
「もしかして、誰かが落ちてた本を香乃子のだと思ったってことかな?」
「えー、それはないよー!」
茜の少しおかしな予想に笑いながら
机まで行き本を手に取る。
その本にはどこかの書店のカバーがかかっていて、
ぱらっと中身をめくると、
著者は桂木悠人、その作品は彼の新作。
桂木悠人の新作といえば……
ちらっと教室の後ろの方の席に座り、
いつも通り本を読む彼を見た。
すると、彼の読んでいる本には、
私が今手にしている本と同じ書店のカバーがかかっていた。
私は
「香乃子?」
という美奈達の横を通り過ぎて、
彼の元へ。
『もしかしたら……』
そう思ってすぐ聞いてみることにした。