稜佑に頼まれたからってわけじゃなくて、

私自身も彼のことは気になってた。

似ているって思うのもあるから、

もしかして輪に入れないだけで読書してるのかな、なんて。


とりあえず班の話し合いが終わってから

茜ちゃんと美奈ちゃんは伊東くんに話しかけてるし

紗依ちゃんもそれを聞いて笑ったりしてる

私は伊東くんと1番席も遠いし

結局会話聞こえなくて暇になるから、いいか。


そう思って口を開く


「み、水野くん、何読んでるの?」

先ずはこう話しかけるのが1番だよね。


私が、――そう今となっては美奈ちゃんだって知ってるけど

当時あんまり知らないクラスの子に
最初に話しかけられた時に

一応一番続いた話題はこれだった。


そしたら水野くんもこたえやすいよね。


私の予想通り水野くんは

本を読む手をとめて顔を上げた。

「……」

その表情からはあからさまに不機嫌さが漂う。


「あ、えっと、私も本好きだから

お話出来たらなー、なんて思うんだけど……」


「…………」

どうにかこたえやすいようにと考えて喋ってるんだどな、

返事がない。


……うぅ、どうしよう。

話題に困ってとりあえず彼の表情を見る――

と、私の方を見てる?

しかも少し首を傾けて、何か私の反応を待っているようで。


ん……?


よくわからない彼の反応と

自分の取るべき態度に

私の思考が停止する。


……やっぱ私には無理だ!!


そう思った時、


「ふーん、水野、桂木悠人の小説読むんだ」


稜佑が会話に入ってくる。

それにもびっくりしたんだけど、

どうやら私は

彼が私の質問にちゃんと答えてくれていたことに気づけていなかったらしい。

ずっと読んでいた本の傾きを机と垂直に立てて
表紙が見えるようにしていてくれたんだ。