私から手を離して

桃井稜佑は目をぱちくりさせる。


ああー、やっちゃったよ……。

高校では絶対キツい口調にならないって

決めていたのに。


未だ何も喋らない目の前の奴を見る。


――これはヤバい。

逆ギレされたらどうしよう。


そう思って

もちろん変なことしようとした向こうが悪いのは当然だけど、

いざこざになったら嫌なのもあるし、

私は謝ることにした。


「あ、あの……ごめん、なさい」


そう声をかけてもこの人は黙っている。


「えっと……怒ってる?」

恐る恐るそう聞くと、

桃井稜佑はにこっと笑って言った。


「山田さんて、実は照れ屋?」


はい?