――昼休みが半分終わった教室に、大声が響いた。
「マジで!?」
休み時間の騒がしい中でも、一際うるさい声。
びっくりして私は少しずれたメガネを直した。
「おう、マジマジ!」
それに応えた声も、クラスに響く。
騒がしさに耐え切れず、
私、山田香乃子は
ついに本を読んでいた手を止めた。
「えー、なになにっ?」
「どうしたの?」
最初の会話が聞こえた人達が、
一気に声の元へと集まりだす。
その周りへと行かなくても、
そっちの方を見て聞き耳を立ててる人もいて、
結局また『アイツ』がこのクラスの中心で何かやってるみたいだ。
「あぁ、なんか稜佑のやつ、
昨日女子との約束トリプルブッキングして修羅場ったらしいよ」
説明している男子は爆笑しながら、
集まってきた人達に説明した。
「うわぁ、稜佑最低-!」
「何だそれ、ネタかよ!めっちゃウケるわ」
クラスのみんなが反応し、
ほんの数秒で瞬く間にクラス中が彼を話題にする。
『スケジュール管理もできないのに女遊びとかクズね』
もし、あの場に私がいたら、こんな事言ってるのかな。
……まぁあの場に入りたいとも思わないんだけどね。