まずいな。
本当に、教科書と参考書しか見てなかったかも。


冷や汗の出る思いで、南校舎に足を踏み入れようとすると――…


「遅かったな、雫」


誰もいない南校舎の玄関、ゲタ箱が並ぶ壁に背中を預け、腕を組んで不機嫌さを隠そうともしない聡の姿があった。


「な…な…なんで?」


そう言って固まるあたしに、


「バーカ。
言っただろ?」


聡は乱暴な口調で、寄りかかっていた壁から体を起こした。