ただ蒼に言われて、言われるがままに歌うって言うのが気に食わないだけで、本当は歌いたかった。


こんなひねくれ者じゃなくて素直な性格なら、蒼の前で何回だって歌うのに。




変なプライドがそれを邪魔してくるんだ。







歌いたい。



歌いたいのに自分でその欲求を我慢すればするほど、喉の疼きが増していく。



それをわかってて蒼はこんな表情をしてるんだ。


なんでもお見通しのような目で、どうせすぐ歌いたくなるんだろ?と言いたげにニヤつく口元。



「歌わないからね!!」

「はいはい。じゃあ俺は自分の部屋戻ろうかな」


ニヤニヤと笑う口元はそのままだ。



よっこいしょとおっさんの掛け声をかけてから立ち上がり、蒼は部屋を出て行った。


ガチャンとしっかりとドアの閉まる音を聴いてから私は適当に選んだCDをコンポに突っ込んだ。



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