俺は栗原先輩が海外へ行ってしまうことを麻緋に伝えた。



本当は毎週木曜日、帰ってくるのが遅い麻緋を心配して校内を探してたら、栗原先輩と麻緋が並んで笑ってるところを何度か見ていた。


その度に、栗原先輩をボコボコに殴ってしまいたいと思ったが、隣で幸せそうにコロコロ笑う麻緋を見ては、その場から立ち去るしかできなかった。





麻緋は栗原先輩に惚れている。


もしくは惚れかけている。


そんなこと誰が見てもわかったことだった。




だから、敢えて麻緋には言わないといけないと思った。


「栗原先輩って人がサッカー部にいるんだけどさ」

そう話し出した時、麻緋の肩がはねた。




「海外へ行っちゃうんだって。でも来年には帰ってくるって言ってたんだけどさ」


軽く、軽く……。

ただの世間話風を装いながら、麻緋に話し出す。



麻緋は黙ったまま俯いて話を聞いていた。



泣くかと思った。


俯いたまま上がることのない顔。


このまま泣いてしまえば、多分俺は何もできない。