しばらくしてから、っというか、俺的には結構な時間がたったと思うけど、実際は一瞬だったと時計を見てわかったんだけど。
麻緋がドンドンっと体を腕で叩いた。
もちろん、そんなことじゃ、この俺を離すことは出来やしない。
だけど、「何すんの?」という冷たい声にビクッと肩が震え、麻緋を手放した。
条件反射って……恐ろしい。
「だって……あの、その……」
麻緋が可愛かったから抱きしめてしまいました。
なんて言えば、どんな反応が返ってくるだろうか。
チラリと麻緋の顔を見ると、赤かった顔がさらに赤くなってて……やばい、めちゃ可愛い!!
さっきの冷たい声は照れ隠し?とかそんな風に都合よく考えてしまう自分の脳がやばい。
めちゃやばい。
重病患者がここにいますよ〜!!!!!!
「あの〜……」
「出てって!!」
「……はい」
歌が聞きたかったはずなのに、何してんだ俺。
この日の夜……麻緋の部屋から、歌声を聴くことはなかった。