「折角来たんだし、ゆっくりしていきなよ」


カウンターの中に現れた雅哉さん。こんにちはと短く挨拶をして私の目の前に立つ。

私も軽く会釈をすると雅哉さんは瓶と一緒に並べられていたティーカップを手に取る。


「コーヒーで大丈夫?」
「あ、私、傘返しに来ただけなんで……」


こんな慣れない空間と、雅哉さんの顔。それを見て少しだけ脈が速くなっている気がする。

出来るだけ早く解放されたいかも。


「折角だから飲んでって。奢るから」


戸惑う私に、奢らせて?と優しく微笑む雅哉さん。その笑顔に負け、もう少し、この場にいさせてもらうことにした。