北陸旅行から帰ってきて一ヶ月が過ぎた頃に
「生理が遅れてるの…」
美恵が心配そうに康弘に電話をかけてきた。
「遅れてるってどれくらい?」
「二週間程だけど大丈夫かな…」
「そう言えば旅行の時も中だししたからなぁ。年齢的には妊娠の可能性は低いけれど、万一の事があるから市販の検査キットで調べてみようか」
「その時は一緒にお願いね」
「分かったよ、多分生理不順だから大丈夫だよ」
「そうね、42歳で妊娠はまずないわよね」
そう言って美恵は作り笑いを浮かべたが、内心はヒヤヒヤものだった。
万が一妊娠が夫にバレでもしたらと考えると、離婚は覚悟しなくてはならないだろうし、何かと面倒な事が起きるので気がきではなかった。
その反面大好きな人の子供を産み、一から人生をやり直せると言う選択肢もあった。
娘の由美が自立するまでは離婚は我慢しようと思ってはいたけれど、妊娠をきっかけに思い切って離婚をし康弘の胸に飛び込むのも構わないかとも美恵は考えるのだった。