美恵と義理の母親である千恵とは相性が合い、本当の親娘のように接し和気あいあいとした仲だった。
娘の由美も
「おばあちゃん、おばあちゃん」
と、よく懐き康弘一家の新生活は順風満帆なスタートを切った。
後は美恵の高齢出産だけが心配の種だった。
いくら医学が進歩しているからとは言え、42歳ともなれば母体にはかなりの負担がかかるだろうし、生まれて来る赤ちゃんも決して安産とは行かないだろう。
その辺は素人の康弘でさえ分かっていて、ただ美恵が無事に元気な赤ちゃんを出産してくれる事を願うしかなかった。
産婦人科で毎週行われる定期検査では特に異常はなかった。
胎児の成長も順調で、事前の調べで赤ちゃんは女の子である事が分かった。
美恵と康弘は新しく生まれて来る女の子の名前をいろいろと考えてみた。
義理の姉になる由美にも意見を聞いてみた結果、赤ちゃんの名前は『美幸』と決まった。
それは、美恵や由美の『美』一字を取ったのと、母親や姉があまり幸せではなかった事から『幸』の一字を加えたのだった。