「ごめんな」

 の謝罪の言葉に、あたしはちょっと強くまぶたを擦って、

「声聞いたら、少しは元気になれたよ」

 涙で濡れた声だったけどそう言った。

「……本当?」

 受話器越しの彼氏が、冷やかすように尋ねる。

「うん、元気になったから今日のところは」

 ぐしゅっ……と鼻をすすり、「大丈夫だから」と言葉を加える。

「電話ありがと」

 言って、あたしは電話を切り、ほっとした気持ちになる。

 仕事が忙しくてなかなか会えないけど、声聞けたから良かった。

 会えないから不安だったのに、ちょっと話しをしただけでこんなに楽になるなんて思いもしなかった。

「携帯って便利」

 そう呟いて、枕元に携帯電話を置くとあたしは安心しきってそのまま眠りに落ちた。


【完】