ふわ、と、自分のくちびるに軽くふれて、思い返す。
・・・あれは、夢じゃ、ないんだよね。
今日から3日さかのぼって、金曜日の夜。
人生で、はじめての、キスをした。
相手は、ずーっと片想いしてる、柊先生で。
かしこくて、かっこいい、オトナの、男の人で。
あきれられるのを承知でねだった、キスだったから。
だからまさか。
・・・本当にしてくれるとは、思わなくて。
『・・・お前のビョーキが、俺にうつったの。』
すこし照れた、だいすきな先生の顔。
そのあとにもう一度、降ってきた温度。
思い出したら、もうたまらなくて、全速力で、走り出したくなる。
・・・ねえ、聞いて。わたし、柊先生とキスをしたの。
世界中のひとに、自慢しちゃいたい。
でももったいないから、だれにも言いたくない。