「えー、前回の復習で、素因数分解の問題だが・・・」



お経みたいな声が延々とつづく、学校の授業、2時間目。


カリカリと、まわりでノートを取る音が聞こえる中。



わたしは、手に持ったシャーペンをまったく動かさないまま、ぼーっと黒板を見つめていた。



「・・・聞いてるか?月野美景」

「〜はっ、はい!?」



上の空のわたしを、目ざとく見つけた数学の先生に、フルネームで呼ばれてしまった。


へへ、と苦笑いしたあと、必死で教科書を読むフリをする。



・・・でもごめん、先生。読んでない。


ちっとも頭に入ってないし、聞いてない。



だって、わたしの頭。もうすでに、ほかのことで、いっぱいいっぱいなんだもん。