けど頭の中には、かんたんに、あきれ顔の先生が想像できた。



・・・アホか。



そう言って、デコピンでもされるかと思ったのに。




「─────、」




くちびるに、ふわり。


柔らかいものが、触れて。




「ぇ、」

「そーゆーことばっか言うからだ」




間近にある、ひっつきそうな鼻先。


先生の顔に浮かんでいるのは、余裕で涼しい表情。




「ほら、傘。まだだいぶ降ってるから気ぃつけて帰れよ」

「・・・・・・」

「返事は?」

「・・・ハイ・・・」




傘を握らされて、突っ立ったまま先生の後ろ姿を見送る。




え。



え?今・・・いま、いま、もしかしてキ・・・




「〜ええぇえぇええっ!?」




思わずがくん、と、膝から崩れ落ちそうになった。