石岡先生が、笑みを浮かべながら、窓の外を指差している。
窓の向こうに、視線をやれば。
「なーんかでっかい傘がお迎えに来てるよ?」
「・・・・・・っ、」
うそ。
うそ。あの傘。
・・・柊、せんせいの。
「お出迎えしてあげれば〜?・・・って、もういねーし」
あわてて、病院の階段をかけ降りていた。
誰かがわたしの様子だけ見てたら、一体なにが起こったんだって、思うにちがいない。
でも。
だって。
・・・だって。
キュッと、靴裏が鳴る。
正面じゃなくて、小さめの、職員用玄関のほう。
階段を降りきってすぐ、見えた。ちょうど、傘を閉じたところ。
バサバサと振られて、飛ぶ水滴。
短い、黒髪。
見つけた。
・・・柊先生の、後ろ姿。