『人間は心臓が左にあるから、相手の左に座った方が、ドキドキしたような錯覚を抱かせて恋愛感情には効果的』
・・・テレビでそう言ってたのを聞いて、実践してるっていうのは、もちろん内緒。
教えてもらいはじめて、十数分が経った。
いくら教え方が上手って言っても、だいっきらいな数学の勉強なんて、あっという間にあきてしまう。
・・・さて、そろそろ、実行にうつしてみますか。
数問終えたところで、わたしは、先生の顔を、両手のひらではさんで。
ぐるん、と無理やり視線をこっちに向けて、正面から、向き合った。
「柊先生」
「・・・なに、どした」
わたしがあきたことがわかったのか、しょうがないなぁ、といった先生の表情。