機内にはいり、座席にすわり、飛行機が飛び立つと… 

信秀はポケットから財布を出し、

半分に折られた写真を出した。

半分に折らなければ財布に収まらなかったのだろう。

それは… 
リュウは驚き、思わずつばを飲み込んだ。

あの時、カイルが見せてくれた、

ソフィアとカイルが写ったものと同じだった。



「この人がソフィア、お前の母さんだ。

写真は一枚もない、と言っていたことは謝る。」



カイルの存在を知らせたくなかったから、
僕に見せなかったのか、
と一瞬そう思ったリュウだ。

やっぱり父さんはカイルと言う子供がいたソフィアを… 

父に限ってそんなことは絶対にない、と
思い込もうとしていたリュウだが… 

父の手にある写真を見ながら頭が悲鳴をあげそうだった。

いきなり胸が苦しくなって来た。


長い事ベッドにいた父だけでは、と思い、

介護の役を兼ねて一緒に来たリュウだったが、

自分の方が奈落の底に落とされたような気持ちになってしまった。

そんなリュウを見て、
信秀は客室乗務員に水とチョコレートを頼んだ。

信秀はリュウが母の写真を見て、
そんなにショックを受けるとは思わなかったようだ。

そう、喜ぶと思っていた。

ところが何故か異様な反応をしている。

訳はわからないが、
とにかく、落ち着くのを待つつもりのようだ。




「その写真とニューヨーク行きは関係があるの。」



しばらくして、気を取り直したリュウは父に声をかけた。

ニューヨークまではまだたっぷり時間はある。

とにかく自分は何も知らない。

父が何を話すのか聞いておかなくてはならない。