それから一週間が経ち、
2人の生活は順調に過ぎていた。
その日、父はそれまでのようにテレビを見ながら、
ゆっくり食事をしていた。
リュウは早く食べ、
自分の部屋にある教科書をダイニングへ持ってこようとしていた。
リュウの中では、勉強は父がいるところでするものだった。
しかし、父の再婚でその形態も代わっていた。
それもリュウが気に入らなかった一因だったのだ。
そして今、不幸な結末になってしまったが、
リュウにとってはまた父と2人の静かな生活が戻って来た。
それならば、小学生の時のように、
今自分がどんな事を学んでいるのか、
父に見せようという気になったのだ。
教科書を持って戻ってみると、
父はテレビを見つめ、
どんな衝撃があったのか、固まっていた。
テレビはBSニュースだ。
「父さん、どうかしたの。
そのニュース、なんだったの。」
リュウの声で信秀は我に帰ったような顔になった。
「あ、いや、ちょっと聞いたことのあるような名前が出てきたから。
多分、明日の新聞にも載るかも知れない…
まあ、外国のニュースなどいちいち新聞に載せることはないか。」
と、最後には独り言のような言葉をつぶやいて、
信秀は食べかけの食事に箸を伸ばしている。
そして翌日の朝刊に…
アメリカの大富豪・キングワード財団の会長、ソージャ・ハワード(39)は
先月、違法薬物の常習者と言う事が分かり、
病院に隔離されていた。
それが2日前に病院を抜け出し、
事もあろうに自分のビルに爆発物を仕掛け爆死。
その巻き添えになったのが、
若干22歳で、新たに会長を襲名したところのカイル・ハワード氏と、
社員10数名、とあった。
全員重傷とか。