「分かった。
それで父さんはあの人たちの骨、どうするの。」
「うん、どうしようかなあ。
あの結婚届は無効になっているし、
血縁関係も全くないから先祖の墓、というわけにはいかない。
あの墓地の隅に小さいものを建てようか、と思っている。
美由紀も最後にはお前の母親のような心境になっていたようだし…
4年も家族として暮らしていたのだから…
どうだ、だめか。」
「別に… 僕に聞くような話ではないよ。
僕は初めから認めていなかったんだから。
父さんの気の済みようにすれば。」
リュウの言葉は淡白だが、水嶋は違った反応だ。
「リュウ、それが良いんじゃあないか。
僕は会ってないけど、
その子たち、きっとお前が好きだったんだよ。
お前、なかなかモテるからな。
義母さんもお前の事を気にしていた、
それは僕も感じていました。
僕は会って話をしていますから…
ええ、リュウより親しく話しましたから。」
「美由紀も水嶋君がいるから安心だ、とか言っていた。
あの仏間に… やはり小さい仏壇を買って弔ってやろう。
美由紀に何があったのかは分からないが、
とにかく家族だったから。」
と、そんな家族の話に水嶋が当然のような顔をして…
塾の時間だ、と言って帰っていった。
「彼は高3なのに、よくお前に付き合ってくれていたなあ。」
「だって、僕、クラブを頑張っているから、
先輩、嬉しいんだよ。
まだ国体がある。
うちからは僕と先輩だけエントリーしているから、
先輩、張り切っているんだ。
だから勉強はできる時に頑張る、って。
僕、先輩が3番目に好きなんだ。」
「3番目… 一番目は誰なんだ。」
「もちろん父さんだよ。
二番目がカイル。
だから先輩は3番目。」
と、無意識にカイルの名前を出してしまったが…
父は何も感じなかったようだ。
友達の一人と思ったのだろう。