「もっとも、中学に入って、
龍彦にはすぐに水嶋君、君が出来た。
学校は龍彦には遠かったが、
そんなことより、
龍彦が登校拒否もせずに毎日通う事が発見だった。
家ではあまり話さなかったが、
君の事は美由紀にも伝えていたらしいから安心した。
そう、美由紀もその辺りから皆を見る目が違ってきた。
特にかずらたちを見る目がね。
ああ、彼女の中の何かが吹っ切れたような感じだった。
私には、龍彦が高校生になった頃から、
家の中が本当の家族のようになってきたように感じられた。
龍彦は相変わらずだったが、
その頃には龍彦の心配はなくなっていた。
まあ、可愛い反抗期のようなものに見えていた。」
そう言って信秀はリュウを見て笑みを浮かべた。
「まあ、リュウはちょっと晩生ですからね。
でも… 義母さんたちの戸籍がそんなんで、
よく手続きが出来ましたねえ。」
水嶋は戸籍を偽装したという美由紀が気になっているらしい。
「美由紀がしたのだよ。
あの頃、私は龍彦の中学を決めるのに一生懸命だった。
一緒に暮らし始めても何の支障もなかった。
龍彦は嫌っていたが、
私はかずらやのぞみが甘えてくると…
嬉しかった。
まあ、不憫に思えていたのも確かだが、
私が幸せにしてやろう、と思っていたのかも知れない。
龍彦もいつかは心を開くだろう、という思いもあった。
しかし、やはり龍彦の将来が気になっていた。
だから弁護士に、
遺言書はついでのようなもので、
本来の目的は高倉の血を引くリュウに全てを譲与しておこうと思った。
あの子達はあくまでも私の金だけで、と言う考えかな。」
父の彼らに対する気持ちは、
何となくリュウが感じていたようなものだった。
リュウは聞いて嬉しい話ではなかったが、
それでも、既に3人とも存在しない。
問題は… 彼らの遺骨だ。
ソフィアの、母の墓はボストン、と聞いている。
リュウにとって墓などどうでも良い話だったが、
今、何となく話題になっている。