「リュウ、元気を出せ。
俺もなるべく病院につめる。
もう、絶対にそんな奴らを入れやあしないさ。」



水嶋も話を聞き、驚き、リュウを慰めている。



「先輩はいつもの通り、
夕食を一緒に食べてくれるだけで良いです。

多分、もう何も起こらない。
それに先輩は受験勉強もあるでしょ。

秋になれば、皆が受験勉強をしている間に国体があるんだから、

心おきなくプレーできるように、

今の内に勉強、しておいてください。

この前は逃がしてしまったけど、
僕は空手が出きるから、
こんど来たら絶対に捕まえる。

夜は警備の人が重点的に見回ってくれる。

それに僕、昼間は学校へ行きボールを打ってくる。

石田が好きにしたら良い、と言っているから、
したくなったら学校へ行く。」


「ああ、そうだな。
だけど、お前のところは親戚などがないんだから、

話し相手がほしくなったらいつでも連絡しろよ。

まあ、取りあえずはいつもの通りにするか。」




数日後、
いつものように水嶋が夕食を終え、
塾へ向った後のことだった。

家政婦の野村さんも片付けを終え、帰っていった。

一人になるとリュウは決まって寂しさが募り、

父の足をさすりながら涙ぐんでいる。

が、その時、
リュウは父の手が自分の頭にかかったような気がした。

慌てて顔を上げたが… 
点滴をしていない父の右手は、
だらりとした様子でベッドの上にあった。

気のせいか… 
そうあってほしい、と望んでいるから… 

と、あきらめの心で父の顔を見ているリュウ。

その時、背後で… 



「リュウ、メダルが2つもあるじゃあないか。
カッコいいな。」



それは… 今まで、何度も連絡したかったが、

何も分からずに、出来なかったカイルが… 

いつかのように、風のように現われている。



「カイル… カイル。」