その内に刑事が2人、
リュウのところに来た。
「リュウ君、これは… やっぱり、お父さんが狙われているんだ。
本当に何も心当たりはないのかい。」
「ありません。
僕、本当に何も分かりません。」
まだ落ち着かないリュウだったが、
まだ意識の戻らない父を狙うとは…
とにかく、自分が見たことは警察に知らせておこう、
と言う気持だった。
「君は犯人の顔を見たんだね。」
「ええ、小太りで…
髪は金髪で後ろでくくっていた…
多分テニスの川田先生ぐらいの年齢の外国人でした。
あ、枠のない細いメガネをしていたかも知れない。」
「そうです。私は追いかけた警備員ですが…
髪は確かにヒッピーのように後ろでくくっていましたが、
服装はきちんとしたビジネスマン風でした。
年齢は30代から40代。
3階の窓から飛び降りて、
そのまま逃げましたから、
かなり運動能力のある感じでした。」
追いかけた警備員がリュウの言葉を補った。
「刑事さん、また空港かも知れない。
早くあいつを捕まえて。
チョコレートの時も、すぐに空港へ行ったのでしょ。」
リュウはそのことがいきなり思い出された。
「ああ、そうだ。おい、すぐに手配しろ。
大体の人相は分かったから」
刑事はすぐリュウの言葉を理解し、
本部から空港警察へと迅速に動いた。
しかし… 該当する人物は発見できなかった。
その翌日、外国人がらみのニュースとしては、
アメリカの大富豪・キングワード財団の創始者、
ガクト・ハワードの3男、
ピクトル・ハワード・(31)が
自家用機でアジアからの帰り、
太平洋上空でいきなり体の不調を訴え、
機内に同乗していた医者が駆けつける間に呼吸が止まっていた、
というニュースが小さく報道されただけだった。