そして消灯時間になり、
あたりが静かになった頃だった。
昨夜は十分な睡眠が取れなかったから、と、
11時前にはベッドに入ったリュウ。
しかし、まだ熟睡に入っていない頃、
隣の部屋で微かに物音が聞えた。
ドアで仕切ってあるのだが、
電気を消し、
眠る時はドアを半分開けていた。
父の部屋は、
夜間巡回の看護師が困らないように、
薄暗い明かりが点っている。
そっと起き出して、隣の部屋を見たリュウ。
そこに小太りの外国人がいて、
事もあろうに父の腕に付けられた栄養剤のチューブをはずし、
側に置かれている看視用の医療機器を触っていた。
空気調節などを狂わせる、か、
止めようとしているようだった。
「僕の父さんに何をしているんだ。」
リュウは飛び出して叫んだ。
そして赤々と電気をつけ、
リュウの声で看護師や警備員たちが駆けつけている。
男は驚き、動揺した様子で、
信秀のベッドを力任せに倒し、
看護師たちを押しのけ、
あとを追う警備員を振り切り、
3階と言うのに窓から飛び降りて消えてしまった。
「父さん… 」
リュウは床に転がった父に駆け寄り…
ぐったりとしたまま反応しない父を抱きしめている。
「高倉さん… 」
看護師たちは驚愕の声を出しながらも、
すばやくベッドを直して、信秀をベッドに戻した。
「すみません。犯人を逃がしてしまいました。
警察には知らせました。
緊急配備を引いてくれるそうです。」
しばらくして戻って来た警備員がそんな事を言っている。