いや、ベスト8に残った頃から新聞にも載っている。
今朝などは顔写真まで出ていた。
「これで心置きなく戦えるな。」
「うん。」
「ギギギィー。」
2人が話しながら歩いていると、
いきなり横の路地からオートバイが体当たりしてきた。
が、さすがに現役のスポーツ選手、
その反射神経はたいしたものだった。
水嶋がリュウをかばうように転がり、
すぐにリュウが起き上がりオートバイの男を睨んでいる。
「先輩、大丈夫。」
「ああ、お前、気をつけろよ。」
「大丈夫です。僕、空手が出きるから。」
リュウは原宿で山崎を助けた時に使った、
空手の感覚が忘れられないのか、時々口にする。
「よーし、こいつを捕まえるぞ。」
そう言いながら水嶋はラケットで戦う素振を出している。
男はやたらとエンジンをふかしているが、
体当たりのように出てきたとき、
オートバイのどこかに不具合が出来たようだ。
黒尽くめのフルフェイスのヘルメットの下から、
男の焦りが見えている。
その時だった。
四方八方からテニスボールが飛んで来て、
男を狙い打ちしている。
硬式のテニスボールだからかなりの衝撃だ。
そして男のヘルメットがはずれた。
それは… 何と、また外国人だった。
「部長、リュウ、もう大丈夫ですよ。
2年生5人と1年生7人で囲んでいますから、
今、警察にも連絡しました。
絶対に水間高校の差し金です。」
リュウはチョコレートの事もあり、
狙われたのは自分だ、と確信にも似たものがあったが、
水嶋を初め部員たちは、
今日の対戦相手、
水間高校の誰かが頼んだ、と思い込んでいた。