「ふーん。
それまでに父さん、起きるかなあ。」
初めての心だったが、
自分のテニスを父に見せたい、と思ったリュウだ。
「そうだな。そればかりは神様にでも祈るしかないな。
とにかく、ちょっとでも新聞に載ったら、とって置けよ。
後でゆっくり見せればいいんだからな。
あ、そうそう、来月の初め、お前、シングルスにエントリーされているだろ。
アンダー・17のいなづま杯。
俺は今月で18になってしまうから出場資格は無いが、
アレに山崎が出るらしいぞ。」
「うん、この前聞いた。
山崎も父さんの事、心配してくれていた。
僕が学校に来られて良かったって、喜んでくれた。」
「そうか。お前、頑張れよ。
お前は持久戦にならなければ確実に強い。
スタミナが切れる前に勝負がつけば、
お前のものだ。
まあ、明日、いなづま杯のつもりでやってみろ。
明日はダブルスの山根・布施組を最後に持って来て、
俺と石田のダブルスを4番に持ってきた。
石田に試合経験を付けさせないとだめだからな。」
2人は明日に迫っている地区大会決勝戦に向けての話をしながら
病室へと向っている。
「お、すごいチョコレートの箱だなあ。」
病室に入ると,
父のベッドの横にあるテーブルの上に、
まるで誕生日プレゼントのように
豪華に包装されたチョコレートの箱が置かれていた。
「おばさん、これ、どうしたの。」
リュウは廊下に出て
湯沸し室の隣に出来ている小さなキッチンで
夕食の支度をしている家政婦に尋ねた。
「ええ、どなたかからのお見舞いのようですよ。
私が買い物に行っている間に持ってきたらしいです。
お知り合いのどなたかからではないのですか。」