テニス部の地区大会リーグ戦は
、山崎が抜けたと言う事で、
残った部員が実力以上に頑張ったのか、

準決勝まで勝ち残った。



「よし、ここまで来たから決勝まで行くぞ。

今でも都大会出場権はあるが… 
次があるから経験を積むのに越した事は無い。

都大会までの間には個人戦もある。

出場予定者は体調管理も忘れるな。

リュウ、お前病院に仮住まいとは大変だが、大丈夫か。」



テニス部顧問の川田がリュウに気遣いの言葉を出した。



「先輩が毎日弁当を持って来てくれるから、
大丈夫です。
僕、個人戦までシングルスですね。」



ダブルスは水嶋とならともかく、
そうでなければシングルスしか興味の無いリュウだ。



「そうだぞ。
とにかく明後日の決勝戦。
リュウ、お前は一番目だ。

相手の闘志を砕くためにもストレート勝ち、だ。

長引けば… 
お前はすぐに疲れるから、
相手が立ち上がる前に勝負を決めろ。」



水嶋も先輩らしく指示を出している。



「はい。」



そんなに上手くいけば誰も苦労はしないが… 

と思いながら他の部員たちは、

平然とした顔で返事をしているリュウを羨ましい気持で見ている。


父の顔を見れば心細くて悲しい気持ちになるが、

こうして無心にテニスをしている時は
気分も軽くなるリュウだ。



そして明日は決勝戦。

最後の練習を終えた部員たちは三々五々と部室を後にしている。



「リュウ、調子、いいな。
あの時はどうなるかと思ったが… 
親父さんのことは… 
なんとも言えんが、

お前がこうして、俺たちと一緒にいてくれて嬉しいよ。

明日、頑張ろうな。

決勝戦を勝ち抜いて堂々と都大会へ乗り込むぞ。

考えてみれば、初めての事だな。」



水嶋がリュウと並んで歩きながら決勝戦への豊富を語っている。



「初めて… 」


「ああ、今までは弱かったからな。
だから学校側も大騒ぎだ。

都大会に出るなんて学校始まって以来の快挙らしい。」


「ふーん。」