そして、カイルの視線を感じ、言葉を続けた。
「この写真に写っているのがカイルとソフィアと言う事。
僕の母さんはソフィアで、
この人がそうだと言う事。
ソフィアのこのおなかにいるのが父さんの子供の僕。
それだけだよ。
カイルは今までどうしていたの。
ソフィアは僕が生まれる前に死んでしまったのでしょ。」
「ああ、そうだね。
私も初めから話したほうが良いと思う。
だけどリュウ、それは次の機会にしてくれないか。
今からしなくてはならないことがあるからすぐ帰国する。
片付けたら戻って来る。
それまで身辺に気をつけてくれ。
今日は、高倉氏の事が心配だったんだ。
いや、君がどうしているかも…
この目で確認したかった。
安心した。」
そう言って、
カイルはとても優しい眼差しでリュウを見つめ、
立ち上がった。
そしてカイルは堂々と病室から出て行った。
すぐ後を追ったリュウだが…
カイルの姿は消えてしまった。
リュウは消化不良のまま、
その夜は一睡も出来なかった。
しかし、そのことは誰にも、
たとえ水嶋にでも話せない、と思っている。
一日も早く、父が目覚めて…
父の口からいろいろな話が聞きたかった。
あの写真は見たが…
いや、もっともっと見たかったが…
カイルが大切そうにして胸ポケットに入れて帰ってしまった。
明け方になっても眠れなかったリュウは
父のベッドの足元にイスを運び、
足を揉みながら、
応えてくれない父に話しかけ…
家政婦に起こされるまで眠っていた。
「さあさあ、早く着替えて…
朝食もしっかり食べてくださいよ。」
と、追い出される形で病室をあとにした。