リュウは相変わらず制服姿だが、
クラブで学校へ行っていたのだから仕方がない。
ラケットが無く、
スポーツバッグだけだからまだ良かった。
また水嶋に会うといけない、
と心のどこかで囁く声がして、
リュウは初めての事だったが、
表参道・原宿へ向った。
原宿と言う名前はよく耳にしていたが、
実際歩いたのは初めてだった。
小学校は家と空手道場の往復、
父が時間の許す限り勉強を見てくれた。
外食は多かったがほとんど杉並区内。
中学に入ってからは、
初めての電車通学とテニスに感情導入して、
新しい環境に必死に対応していた。
だから家に戻れば疲れ、
時間があれば昼寝を含めて寝ていたような気がしている。
高校も1年は似たようなものだった。
そして2年生になって2ヶ月、
かなり高校生活には慣れているが、
今までは中学時代と同じような生活パターンだった。
そして、ここに来て…
昨夜に引き続き、
今もこうして初めての体験をしている。
痩せてはいるが、175センチで
石膏細工のような顔立ちのリュウ、
本人は意識していなくても、結構絵になる存在.
行き交う人が振り返る。
時々は変な奴が(実際は芸能関係のスカウトだが)寄って来る。
リュウはその度に鋭い眼差しで睨み返した。
さすがに原宿、
どこも人でごった返しているような場所だったが、
ちょっとした路地の陰で聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
どうやらもめているような声だ。