「リュウ、帰ったんだね、お帰り。」


「なんだ、かおりか。
お前、向こうの車両だったのか。」


「そう、桑田先輩に付き合っていたの。」



どう考えても視線の主はかおりではないが… 

リュウは忘れて、かおりと話している。


一駅手前でかおりがおり… 
リュウもドア近くに移動した。


すると、その時、一人の外国人、

かなり若い、外国の少女がリュウを見ていた。

長い茶色い髪をポニーテールにくくり、
きれいな飾りでとめている。

リュウと目が合うと驚いたような顔をしてうつむいた。

リュウは気にしないで、
電車をおり、
真っ直ぐに家に向っている。

しかし、神経を後ろに集中させれば、

あの少女が後をつけている。

リュウは気がついたが、
彼女など全く見覚えは無い。

後ろを振り返らずに早足で歩き、

家の門扉を、しっかりと鍵までした。

家政婦さんは帰る時に自分で開け、
自分で鍵をして帰ればいいんだ。



「ただいま。おばさん、父さんは。」


「お帰りなさい。
とっくにお帰りですよ。
書斎でいろいろな所へ電話をかけているようですよ。」



家政婦さんは夕食の支度をしながら
信秀の行動を説明している。



「父さん、ただいま。
あのね、今、変な女がいた。」



こういう話し方がまだ少年っぽい。

しかし、リュウは
父にこういう話し方をするのが好きだったのだ。