「お袋さんの墓参りか。」
「うん。父さんがあの人たちを家に入れなければ、
中学の頃に行っているはずだったんだ。
だけど、今の方が嬉しい。
僕にも兄さんがいる事が分って…
今は住むところは違うけど、
心は家族になっている。
家族みんなで墓参りだよ。」
「ああ、それがいいな。
それはそうと、リュウ、
弁当はどうするんだ。
なんなら毎日2人分、持ってくるぞ。」
と、リュウの世話をするのが好きな水嶋、
いきなり思い出して言葉を出している。
「大丈夫です。
あのままあの家政婦さんが来てくれているから。」
「そうか、じゃあ、食事は大丈夫なんだな。」
「日曜日はその家政婦さんが休みだから、
父さんが先輩の店に行こう、と言っています。
カイルが先輩の店を褒めていたから、
父さん、行きたくて堪らないって。
この前、車で向かっている時に襲われて、
ずっと入院していたでしょ。
だから余計に…
お兄さんが作ってくれたお寿司は食べたけど、
僕も店には入っていない。」
「そうか。分った。
親父たちに言っておく。
じゃあ、遅くなったけどちゃんと帰れよ。」
「うん、今日は父さんも大学へ行った。
でも、今日は挨拶だけだからとっくに戻っていると思う。」
そう言いながら水嶋と別れて電車に乗っているリュウ。
リュウは白人とのハーフ系少年、
いつも何らかの視線の的になっている。
中学まではかなり小柄だったから、
ただ可愛い子、で終わっていたが、
高校生になり背が伸びたリュウは、
初めての人でも気になる青少年になっている。
だからそう言う意味の視線はいちいち気にしないし、
慣れている。
ところがその時はちょっと違う視線を感じていた。
悪意は感じないが、
誰かが食い入るように目つめている視線だ。
さりげなく辺りを見回したが…
分らなかった。