「仕事… そんなことは他の人たちに任せれば良いじゃあないか。
皆頑張っている、とエルザさんが言っていた。」
「フ・フッ・・そうですけど、
私は日本人と同じ勤勉なのです。
1日をリハビリのためだけに費やすなんて…
時間がもったいない。
いろいろな事を考えていた方が、
足のことも忘れられる。
それに、日本に滞在する時は…
2人の事だけに心を使いたい。」
そのカイルの話し方…
完全に吹っ切れて、
未来を見すえているような強い自信が感じられる。
そんなカイルを、リュウは憧れる様な顔をして、
信秀は愛おしそうな顔をして心を温かくしている。
「リュウ、絶対に頑張れよ。
父さん、リュウのことお願いします。
リュウの存在で…
私は生きていけます。」
カイルは真剣な顔をして信秀を見つめている。
それは信秀にとっても同じ気持だ。
そして翌日、カイルに見送られ、
二人は日本へ向けて飛び立った。
「リュウ、やっと戻ってきたか。
俺、毎日どれほどどきどきしていたか、
本当にテニス、大丈夫だろうな。」
帰国した翌日、
リュウは部活中のテニス部にだけ顔を出した。
「僕は大丈夫です。先輩は。」
「俺は大丈夫だ。
これまでだってみっちり練習していたからな。
山崎が国体経験者の人を紹介してくれて、
数日間だが相手をしてもらった。」
「山崎が。」