「あ、そちらの彼女もタメでいいよ。よろしく。」
急に声をかけられたこっちゃんはリアルに文字通り飛び上がり真っ赤になった。
「は、はいッ!あのっ、私、庄島 琴音(しょうじま ことね)っていいます!颯太先輩のことは噂でよく聞いてます!」
「「噂?」」
あたしはこっちゃんの口から吐き出された”噂”の意味が分からなくて聞いてみた。
颯太の声とも重なる。
ということは颯太も知らないのだろうか。
こっちゃんはあたしを「あんた知らないの!?」という目で一瞥して颯太に向かってしゃべりだした。
「有名ですよ、颯太先輩は。『二年生に学校一のイケメンがいる』って。学校中の女子に聞いたら9.5割の人はこの噂知ってると思いますよ。」
え、じゃああたしってその残りの0.5割の希少価値のある女子ってことじゃん。
何か乗り遅れてる感じがして嫌だ。
「俺、そんなことでそんなに有名なんだ?」
言いつつもまんざらでもなさそうに照れる颯太を見て、こっちゃんはニコッと笑った。
「ええ。だから私、颯太先輩と喋れてすごく今嬉しいですよ。」
あたしはこっちゃんを見上げて羨望の眼差しを向ける。
だって、学校一のイケメンって知ってなお自然に会話するんだもん。あたしには出来ないや。