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「おはよー、美保。」


翌日、校門の前にたどり着くと友だちのこっちゃん––琴音(ことね)が声をかけてきた。


「おはよう、こっちゃん。」


こっちゃんは全体的にキリッとしてて、あたしにとって頼りになるお姉ちゃんみたいな存在。

ついでにあたしと違って背も高いしね。


「ねえ何か面白いこと土日にあった?」


こっちゃんが歩きながらあたしの顔を覗き込んだ。

チラと昨日のお兄ちゃんの"オタク発覚事件"が頭に浮かんだけど、気づかなかっ
たことにした。ちくしょうめ。


「ううん、特には–––」
「おはよう美保ちゃん。」


声がした真後ろを振り返ると、昨日のイケメン––もとい、伊坂 颯太がにこやかに笑ってあたしたちの後ろをついてきていた。

すると、隣を歩くこっちゃんは口をぱくぱくさせて颯太に(?)何か言いたそうに
していた。うん、金魚みたいだよこっちゃん。


「お兄ちゃんはあれからどうなの?」

「へっ?」


ナチュラルにあたしの横について歩く颯太に、こっちゃんだけでなく周りの生徒たちも目を丸くして見ている。


そりゃ驚くよね。こーんなイケメンがただの平凡な一年生(こっちゃんはともかく)と歩いてたら。


「お兄さんがああいう趣味だって知らなかった?」

「うん––…あっ、はいっ。」

「ははっ、かわいいねぇ。うん、タメでいいよ。」


快活に笑う颯太の横目にこっちゃんが「ちょっと!二人だけの世界に入らないでよ!ねぇ!」と小声であたしに訴える。

いや、そんなこと言われましても。