「彼女たちは姉妹で、店員のほうが大学生のお姉さんで、野村 翔子(のむら しょうこ)さん、もう一人が一高の2年生の野村 智咲(のむら ちさき)さん。俺の幼なじみなんだ」
やっぱり、あたしが踏んだ通り“幼なじみ”だ。
一高、と言ったら県下一位二位の学力を争う進学校だ。
年下かと思う童顔だったけど確かに賢そうな顔をしていた。
「ちなみに翔子ちゃんは俺の初恋の人なんだ」
「ええ!?」
…いや、でも明るくて素直そうな人だったし無理もない話か…。
「あえなく小学校のときに撃沈したけどね」
懐かしそうに目を細めて笑う颯太は暗がりの中でも優しいと分かった。
「好きだって言ったら、何て言われたと思う?」
「……さ、さあ?」
「『渥美清が理想の男性だからゴメンね』って言われたの」
「えええええ!!」
何だそのギャグまんがみたいな断られ方。てか寅さんて。
「…で、ちー…智咲ちゃんは未熟児として産まれてきて、今もあまり身体が強くないんだ」
なるほど、そういえばコートの袖口から覗いていた腕、すごく白くて細かった。
「でも、頑張り屋さんで無理することが多くて、必然的に病院のお世話になることが多くて」
病院着に身を包んでベッドの中から身体を起こして参考書を解いている、智咲さんの画が容易に頭に浮かんだ。