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書店を出て颯太に挨拶したら一人で帰るつもりだったけど、『俺の名誉に懸けて送らせて』とわけの分からないことを言われて、今隣には自転車を押す颯太がいる。
店を出てからずっとあたしたちは無言のままだった。
住宅街の外灯の薄明かりのなか颯太をこっそり見上げると、何か考え込んでいるように押し黙ってぼんやりしていた。
はぁ、と息を吐くと綿菓子みたいにふわりと現れてすぐに消えた。
すっかり冬だなぁ…。
指先は冷たくなって感覚が無くなりかけているし、首元はマフラーを持って来てないのでスカスカで無意識に首を縮めてしまう。
少しでも温かさを戻そうと指先をこすり合わせた。
「あ、ごめんね。気付かなかった」
ちょっと支えてて、と自転車を任せられたかと思うと颯太はマフラーを惜し気もなく外してあたしの首元に優しく巻いた。
「え、いいんですか」
「いいも何も俺がこうしたいし、こうしないで美保ちゃんに風邪引かれたら俺が聡に殺される」
冗談めかしてそう笑った。
何それ。
「ふふふ」
颯太に怒る兄ちゃんを想像して思わず笑いが漏れた。
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書店を出て颯太に挨拶したら一人で帰るつもりだったけど、『俺の名誉に懸けて送らせて』とわけの分からないことを言われて、今隣には自転車を押す颯太がいる。
店を出てからずっとあたしたちは無言のままだった。
住宅街の外灯の薄明かりのなか颯太をこっそり見上げると、何か考え込んでいるように押し黙ってぼんやりしていた。
はぁ、と息を吐くと綿菓子みたいにふわりと現れてすぐに消えた。
すっかり冬だなぁ…。
指先は冷たくなって感覚が無くなりかけているし、首元はマフラーを持って来てないのでスカスカで無意識に首を縮めてしまう。
少しでも温かさを戻そうと指先をこすり合わせた。
「あ、ごめんね。気付かなかった」
ちょっと支えてて、と自転車を任せられたかと思うと颯太はマフラーを惜し気もなく外してあたしの首元に優しく巻いた。
「え、いいんですか」
「いいも何も俺がこうしたいし、こうしないで美保ちゃんに風邪引かれたら俺が聡に殺される」
冗談めかしてそう笑った。
何それ。
「ふふふ」
颯太に怒る兄ちゃんを想像して思わず笑いが漏れた。