「そうそう、今、智咲も店内にいるのよ。どこかなー?」
『ちさき』という明らかに女の名前に耳がダンボになった。
『ちさき』って誰。
「あ、いたいた。智咲~!」
翔子さんの声の向く方を見ると、『ちさき』さんとおぼしき女の子がこっちを見た。
一番特徴的なのは、何と言っても腰まで伸びた長い髪だった。
サラサラしてて指通りよさそうな、手入れの行き届いた綺麗な細い髪が小さな耳のすぐ隣できっちり結われている。
顎より長めの横髪に縁どられた小顔は、あたしが言えたことではないけど童顔。
ホワイトクリームみたいな色のコートの裾からはシンプルなデザインの茶色いブーツが覗いている。
身長はあたしと同じくらいか低いくらいだろうか。
年下…?
というのが、第一印象だ。
「お姉ちゃん店内で大声ださな……」
心底迷惑そうな顔をして抗議したかと思うと、突然目が大きく開かれ、ほっぺたを真っ赤に染めた。
「し、し、……っひ久しぶりっ…!」
『ちさき』さんの目には、あたしも翔子さんも映ってないのが明白だった。
颯太だ。
「久しぶりだね、ちー。」
颯太も振り返って『ちさき』さんを捉えると、笑い返した。
チクン…と胸の辺りが痛んだ。