結局、颯太はあの医学雑誌を買うみたいだった。
「あら、颯ちゃん!また買いに来たのね~」
レジの女性店員が颯太をあたしの後ろに見つけて親し気に声をかけた。
大学生くらいだろうか。
「こんばんは、翔子ちゃん」
颯太もにこやかに笑って答えた。
あたしは思わず眉を顰めた。
「あっ、失礼しましたっ!420円です。カバーはお付けしますか?」
「はい、お願いします」
つっけんどんな態度をとってしまって後悔したが、変わらず笑顔のままの『翔子』さんを見るとどうでもよく思えた。
「ありがとうございましたー。またのご来店をお待ちしております」
やっぱり感じの良い笑顔でお釣りとマンガを渡されて、なんだかこっちが申し訳なくなってしまった。
無言のまま会釈して身を退いて颯太と入れ替わった。
颯太の背中で『翔子』さんが見えなくなった。
「ねえ、そちらの可愛い女の子は颯ちゃんの彼女さん?」
ちょ、すんごい単刀直入に訊く人だなぁ…
「いや、そんなんじゃないよ。
聡っていたの覚えてる?アイツの妹君だよ」
「あぁ、あのオタク友達の聡くんの!いやだ可愛い~」
話し方、呼称、『翔子』さんの発言からして、二人はかなり親しい間柄みたい。
なんとなくおもしろくなかった。