ひとしきり慌てた後、お兄ちゃんは目を泳がせて口を尖らせて口笛をわざとらしく吹き始めた。
いったい何のマネのつもりか。しかもヘタクソ。
そのお兄ちゃんを後ろから見ていたさっきのイケメンはベッドに手をついて片手でお腹を押さえてプルプル震えて笑っていた。
なんか失礼じゃない…?
あたしはとりあえずお兄ちゃんを裁くことに決めた。
「……お兄ちゃん。あたしは趣味は人それぞれだと思うし、個人の自由だと思うけど…」
不審な挙動をするお兄ちゃんをビシッと指差して言い放つ。
「…正直あたしショックだよ。はっきり言って引いた」
「美保…!」
うしろのテレビ画面を隠していたお兄ちゃんは、ガクッと膝を折り『orz』の形にうなだれた。
テレビ画面では、さっきの美少女が小首を傾げて『一緒に帰る?』という吹き出しを繰り出していた。
だって。
まさか自分のお兄ちゃんがオタクだなんて思わないし、信じたくないでしょ?
あたしの方が『orz』の気分よ。
すると、いきなりさっきのイケメンが声をあげて大笑いし始めた。
「ぷっ、ははははは!ははははは!」
もう!何なの!?
あたしは未だに大笑いを続けるイケメンをキッと睨んだ。