「ねえお兄ちゃんがあたしの変わりに走ってよ」

「えええ!?いやだ!」

「男と女の体力差はバカになんないんだから!」

「体育は常に4だよ!」


普段、始業には余裕を持って登校するあたしは徒歩通学であるのに対し、お兄ちゃんは睡眠優先のため自転車通学。


そして今日あたしは寝坊したので、徒歩で行って遅刻しないわけがないのだ。


「じゃあ後ろに乗「無理無理無理!!」

にいちゃんはブンブンと横に首を振る。


即答かい!軟弱者めがぁぁぁ!!


にいちゃんと小競り合いをしながら歩いていると、交差点のところにウチの高校の制服に身を包んだ男子が、あたしたちの方を見て手を振っていた。


まだ10mくらい先で、あたしはあんまり目は良くないので誰かは判らない。


「あ、颯太!」

「ひっ…‼」


にいちゃんの応えた名前に無意識に悲鳴らしきものを叫んでしまった。


……なんか、何でこんなに過剰反応しちゃうんだろう。



自分で自分に疑問を抱きつつ歩いていると、ついに颯太の前に辿りついてしまった。

「はよー、聡今日は遅かったんだな」

ハハハと爽やかに笑う颯太の形の良い口元から白い歯がキラリーンと輝いた。


う、胡散臭い…!


「…で、今日はお姫さまもご一緒ですか」


笑った顔のまま慎重に颯太の視線があたしに移る。