「美保の思う通りに、しなさい。」


ふ、とやわらかい笑みを零しながらお母さんは言う。


「悩む事は、大切なことよ。見て見ぬ振りはダメ。立ち止まっていいから、美保なりの思う道を進みなさい」



いきなり真顔になったと思えば、なんて突拍子もないことを。


あまり意味は俄かに理解出来ないけど、きっと大切なことなんだろう。



それこそ、じっくり考えていけばいいってことかな。



「……うん。いってきます。」



食べかけていたトーストを飲み込むと、全開の笑顔でお母さんに答えた。



「いってらっしゃい、お母さん。」


「ええ、いってきます。聡も美保もお互いによくしてやってね」


「分かってる」


お兄ちゃんが玄関のドアに手を掛けて言った。




「じゃ。」





パタン、とドアが完全に閉じられるまでお母さんはあたし達に手を振っていた。