遠慮がちにあたしの部屋に入って来た母親の雰囲気に、不意に違和感を覚えた。
お母さんは、同じシャンプーとかを使ったはずなのにあたしとは違う、優しい匂いがした。
これが“お母さん”の匂いってことかな。
すごく、落ち着く…。
「お母さんがしっかりしてなくて…、明日にはもう居なくなっちゃうから。」
「うん」
「ちょっとお話したくて……。いい?」
「うん!大歓迎!」
あたしは自然と笑みをこぼすとお母さんの手を取り、一緒にベッドに腰掛けた。
「…美保、学校は楽しい?」
あたしたちは、手をお互い重ねたまま話し始めた。
「うん、それなりに楽しいよ。こっちゃんもいるし。」
「こっちゃん……あ、庄島 琴音ちゃん!?あら~、小・中・高でずっと一緒なのね~」
部屋に入って来た時の遠慮がちな雰囲気は嘘だったかのように、お母さんは心の底からニコニコ笑っているように見えた。
気のせい、かな。
さっき感じた妙な違和感。