「もう何だかお嫁に行ってほしくないよ」


お兄ちゃんが頬杖をついて目を細めてあたしを見てきた。


し、シスコン…。


もう昼間には判っていたことだけど、改めて恥ずかしくて思わず俯いた。


「いやぁね~、聡ったらぁ。それお父さんのセリフよー」

お母さんがごくんと飲み込んで快活に笑い飛ばした。


「美保は可愛いからなぁ…。兄貴としても心配なんだろ、美保に群がるケモノどもが居て。」

お父さんはというと、しみじみと頷きながら言った。


ええぇお父さん気にしてないよお兄ちゃん何であんたが親父みたいな心配するの!?


内心お兄ちゃんとお父さんにツッコミを入れてみたり。意味ないけど。


「美保」


「ん?」


お兄ちゃんが急にあたしに声を掛けた。


「約束、覚えてるよね…?」


ドキリ、と心臓が大きく波打った。


それと同時に颯太のことも思い出した。



大丈夫…あれは約束を破ってないうちに入る、はず…。



ひとり自分の中で結論付けてセーフサインを出す。


お父さんとお母さんはそんな二人の子どもの様子を見て、無言で首を傾げていた。


「覚えてるよ…。」


って言っても、今日突然思い出したけどね…。