「お母さんはすっかり向こうの習慣が染みついてしまったみたいでねえ。お父さんはまだ慣れてないんだけど。」

言いつつお父さんもあたしとお兄ちゃんにハグしてくる。



「んん~、いい匂いねー。久しぶりの和食だわ~」

お母さんはキスしたことに満足したようで、マフラーとコートを椅子の背に掛けるとテーブルについた。



あたしとお兄ちゃんはもう食べてしまっていたから、テーブルには2人分のご飯を並べた。


今日のメニューは、白ご飯、豆腐と大根のお味噌汁、煮物、小松菜のごま和え、そしてお好みで根菜の浅漬け。


近年は旬がよく分からなくなっているけど、本来冬の旬と云われていた大根と小松菜を使った旬のメニュー。


お父さんも上着を脱いで椅子の背に掛けると、目を輝かせて感嘆の溜め息を吐いた。

「すごいなぁ。美保はこんなもの作れるようになったんだなぁ…」

「家事全般はだいぶ普通にこなせるようになったんだよ」


褒められて素直に嬉しくて『えへへ…』と思わず頬が緩んだ。

「さ、食べましょう。あなた早く椅子に座って。せっかくのご飯が冷めちゃうじゃない。」


お母さんがお父さんを急かして椅子に座らせると、二人揃って手を合わせて「いただきます」と言った。


お父さんもお母さんも最初は味噌汁に手をつけた。

こんなところで二人の欧米化が窺えて何だか面白い。


「ん~、大根が甘くて良いわ…」

「久しぶりの味噌の味だな~…」


二人とも何かを懐かしむように少し上を向いて目を閉じた。


「美味しいよね」

お兄ちゃんが参考書から顔を上げて二人に問いかけた。