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「呼ばれて飛び出てじゃ◯じゃじゃ~ん!」




突然のリビングのドアのけたたましく開く物音と大声にリアルに飛び上がり、運んでいる途中だった味噌汁を危うくこぼしそうになった。

テーブルに参考書を開いて勉強をしているお兄ちゃんも“飛び出て”きた人を見て固まっている。


「はぁい美保、聡。元気にしてたかしらぁ?」



声の主は、お母さん。


栗色の髪は後ろで緩く留めて、オレンジ色のウール地のマフラーを白いコートの上から巻いている。

一見、子持ちには見えない人だ。


お母さんの後ろにお父さんが苦笑いしながら立っている。



「びっくりしたー…。危うくこぼすところだったじゃん!!」


とりあえずテーブルに味噌汁を置いた。


「…静かに入って来れないの……」


お兄ちゃんは抗議しても無駄だと半ば諦めたように溜息を吐いて問題集に目を落とした。

ていうか『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん』って古いな!ネタ古いよ!


お母さんはそんなあたしたちを気にした風でもなく部屋の中に入って来た。

「あら、元気そうでなりよりね!ほら、『おかえり』のキスは?」

「は?」


固まるあたしたちを余所にお母さんはあたしとお兄ちゃんの頬に軽くキスしてきた。


な、…こ、これって…


呆然とするあたしたちにお父さんが声を掛けた。