「ケダモノって……自虐になるけど、今まであたし男子に告られたこととかないよ。」


そう言うと、お兄ちゃんは『とんでもない』とでもいうような顔をして頭をブンブンと横に振った。


「だって、俺聞いたんだも_……っ、いや、うん。とりあえず、絶対に美保は可愛いんだから!」

「いや、ちょっと!何言いかけたの!?」


ガッとお兄ちゃんの二の腕をわしづかみして言葉尻に食らい付いてみた。爪を立てる実刑もセット。


『いってえ!』と悲痛な叫び声を小さくあげて涙目であたしを見下ろしてくる。


ち、これでもまだ吐かないかクソヤロー。



あたしはパッと手を離し、瞬時に目に涙という名の液体を溜めた。


「…お兄ちゃん。あたしに、言えないこと…?」


「……っう、」



お、落ちた…。


うわーシスコンだと自称するんだから泣き落としに弱いはずと踏んで一か八かでやってみたけどホントに効いてるからビックリだわ。


にいちゃんは居心地が悪そうに周りを見回してから口を開いた。


「小学校のころ…聞いたんだよ。男子が美保のことを噂してるのを……」

「ウワサ?」

にいちゃんは慎重に頷いた。


「うん。あんまり分かんないかもしれないけど、男子ってとびっきり可愛い女の子がいたとしても友達以上になろうとか思っても、出来ないんだ。」

「はあ…。……だから?」


「分かるかなー。『あんなに可愛い子の彼氏が自分?いや、釣り合わなさ過ぎるから無理だ。畏れ多い。』って思うことがあるんだ。」



それはよほどの美人じゃなきゃ起きない現象じゃない?


自分の容姿を思い浮かべて内心びっくりする。


いやいや、あたしに限ってそれはない。うん。