「大丈夫だから、ほんとうに。怒ってくれてありがとうね…?」
どうどう、とこっちゃんをなだめた。
それでもこっちゃんはまだ不服そうに険しい顔をしていたけど、とりあえず椅子に腰掛けた。
「先輩が悪いのはほぼ100%なんだけど、美保。あんたもちょっと警戒心もちなさいよ」
「は、はい…」
こっちゃんは長い自分の脚を鬱陶しそうに大きな身振りで組む。
なんだか『女王様…!!』って言ってしまいそうなオーラ滲み出てるよ。
「次にあたしがまた先輩に会うことがあったら一発、大外刈りをお見舞いしてやろうかしら」
「ちょ、それって手加減出来なかったら病院送り…」
「あれ~、あの人って二年生?どうしたんだろー」
近くにいた女の子が廊下に目をやり、言った。
つられてあたしとこっちゃんも見て、あたしは思わず「あっ」と声を上げた。
「に、にいちゃん…!?」
そう。お兄ちゃんが廊下からあたしの教室の中をキョロキョロ見回しては廊下をうろうろするという迷惑極まりない不審な行動をしていた。
うわ、他人のフリしたい…。
と、思った直後ににいちゃんとガッチリ目が合った。
にいちゃんはパアッと顔を輝かせ、勢い良くガラーッと教室の窓を開けた。
「美保!今日一緒に帰ろー!」
ざわっと教室の空気が蠢いた、気がした。