「じゃーな」


そう言って片手を上げた黒あくまの足音が廊下の先に消えると、



「こんな時間まで。
二人っきりの密室で。
何してんだよ。
・・・お姉ちゃん」



聡はあたしの手首を掴み、



「忘れ物」


あたしの手にかばんの持ち手を握らせ、



「無防備に泣いてんじゃねーよ」



眉間にしわを寄せて、
小さな声でボソッとつぶやいた。