こ・・・怖い。


怖すぎて、足が前にでない。


謝るべきなのに、


口も歯がカタカタして、声にならない。


唇をかみしめて、目を泳がせたあたしの前で、


黒澤敦は大きな体をゆっくりと曲げて、


「泣けば許さるわけじゃないだろ?」


あたしの頬を大きな手の甲で乱暴にぬぐって、


「お楽しみのところ。
悪いな、聡」


聡にチラッと鋭い目線を走らせ、


荷物を担ぐように、


軽々とあたしを肩に担いだ。